Portal:15.0/Features
openSUSE Leap 15.0 は...
本バージョンより、 SUSE が Leap から SLE への移行をサポートするようになります。アプリケーションの開発者は Leap を利用して開発を行ない、認証や大規模配置、拡張長期サポートを受ける目的で、そのアプリケーションを SLE 製品に載せることができるようになります。 openSUSE Leap 15 では、 SUSE Linux Enterprise (SLE) 15 のソースコードをベースにして、その上に多数のコミュニティパッケージを追加し構成しています。これは openSUSE/SLE では初めての試みで、当初の段階から 2 つのメジャーリリースを同時並行で、かつ同じコア (中枢) を共有しながら開発していることになります。なお、 SLE 15 は近いうちに発売される予定です。 Leap という名称を使い始めたのはバージョン 42.1 からですが、これは SLE 12 のサービスパック (SP) 1 をベースにして作られているものです。それから 3 年が経過して、 SUSE のエンタープライズ製品と openSUSE のコミュニティ版は、バージョン番号も新たに取り直して 15 という共通のバージョンになっています。
本リリースでは、システムの役割を選択できるようになっています。従来と同じサーバ構成のほか、新たにトランザクション型のサーバ構成も設定できるようになっています。これは Kubic プロジェクトが提供している仕組みで、読み込み専用のルートファイルシステムと一括適用型の更新を取り入れています。この仕組みでは、コンテナのホストや IoT (Internet of Things; モノのインターネット) のほか、従来型のサーバ用途や将来的にはデスクトップまでも、この利便性を受けられるようにする予定です。
開発者向け機能
openSUSE Leap 15 では様々なコンテナやコンテナ化されたアプリケーションが提供されています。 Flatpak や AppImage は、それぞれソフトウエアの配置やパッケージの管理、アプリケーションの仮想化などを行なうソフトウエアユーティリティですが、これらを使用することで、開発者は Linux のアプリケーションをシステム内で切り離して実行することができるようになります。また、 Docker のコンテナやツールは、アプリケーションの構築や出荷を素早く簡単に行なうことができます。 Open Container Initiative Specifications の仕様に従ってコンテナを実行する場合は、 containerd パッケージをお使いください。
Leap 15 でのシステムのコンパイラは gcc 7 ですが、 Leap 15 のサービスパックと共に様々なコンパイラが追加される予定です。このほか、 Leap では初めて GNOME Builder が利用できるようになり、開発中の GNOME プロジェクトを簡単に構築できるようになります。 GNOME Builder は GTK アプリケーションの構築用としてだけでなく、 C/C++/Vala などを含め、多数の言語にも対応するパワフルな汎用 IDE としても提供されています。このほか、 Qt5 の設定を Qt5 設定ツールで設定したり、スケールやスライダー、ダイヤルやコンパス、温度計やホイール、ノブなどの Qt ウイジェットを制御したり、値や配列を表示したりする機能も用意されています。また、開発者は堅牢性と安定性を兼ね備えた GTK 3.22.30 を利用することで、 gtk ベースのアプリケーションで新しいユーザインターフェイスを作成することもできてしまいます。
Leap では様々なプログラミング言語が提供されています。 Go, Rust, Haskell, C++, Ruby on Rails, Java, Python, Perl など、挙げていったらきりがないくらいです。 Leap では開発者の要件にあわせて、 libzypp, libvirt, glib, libstorage-ng など、様々なライブラリも用意されています。 libvirt を利用して共有ライブラリを構築することもできますし、 libtool-testsuite 内のシェルスクリプトを使用したり、 glib をデータ型やマクロ、型変換や文字列ユーティリティ、ファイルユーティリティやメインループの抽象化など、汎用目的のユーティリティライブラリとして使用することもできます。
システム管理者向け機能
システム管理者や小規模の企業であれば、 Leap を利用して Web サーバやメールサーバを構築することができます。このほか、ネットワーク管理プロトコルである Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP) を利用したり、 Domain Name System (DNS) を利用してリソースの配置を設定したり、 Network File System (NFS) を利用してネットワークを介したファイル共有を提供したりすることもできます。 openSUSE Leap 15 のリリースでは、 NextCloud や ownCloud といったファイル共有/ホスト共有パッケージも用意されているほか、グループウエアアプリケーションスイートとして Kopano も提供されています。既存の Leap ユーザであれば、 Leap 15 へのアップグレードは円滑に実施できるようになっていますので、移行も容易です。また、 openSUSE Leap では全ての メンテナンス更新 を Delta (差分) RPM を利用して実施することができますので、 Leap システムを日々更新するにあたっても、最小限の帯域のみで済むようになっています。
YaST の更新としては、従来の openSUSE バージョンに存在していた過去の様々な制限を取り除き、全く新しいインストーラおよび起動用のテーマが導入されています。新しくなった libstorage-ng では、パーティション設定をよりパワフルかつわかりやすく実施することができるようになっています。 YaST のパーティション設定は従来でも十分にパワフルでしたが、 libstorage-ng によってさらに一段高い信頼性を確保しています。また、本リリースの Leap ではファイアウオールも新しくなっています。従来は SuSEfirewall2 を使用してファイアウオールを管理してきましたが、新たに FirewallD と呼ばれる管理デーモンを利用することで、より対話的かつパワフルにファイアウオールを設定することができるようになっています。
openSUSE Leap は他のディストリビューションよりも高品質で、地球上で最もテストされている Linux ディストリビューションでもあります。 Leap は安全な開発モデルを採用して構築されており、エンタープライズ製品をベースにしたコミュニティディストリビューションという位置づけであることから、 SUSE 側の開発者との共同作業も、オープンソースだけでなく Open Build Service や openQA などの openSUSE ツールを利用して、百万回以上のテストを実施しています。また、活気のある開発者コミュニティの存在により、オープンソースツールや Leap と SLE との間のディストリビューションの調整機能も提供されていますので、開発者にとっては Leap に貢献しやすく、技術革新も行ないやすい仕組みになっています。さらに、 Leap は仮想マシン (VM) のゲストやコンテナのゲストとしても利用できますので、単一のサーバからデータセンターのような大規模環境まで、どのような環境であっても、ネットワークサービスを効率的に提供できる環境を備えています。
ユーザ向け機能
KDE の最新バージョンは PackageHub を介して SLE 15 にも提供されていますが、 Leap 15 でも Plasma 5.12 長期サポート版を同梱しています。コミュニティによるサポートツールとアプリケーションも利用することができます。また、 Leap 15 では、 KDE のライブイメージも復活しています。
openSUSE Leap では、従来のバージョンでも自由なデスクトップ環境の選択肢を提供しています。 Leap 15 における GNOME のバージョンは SLE 15 のものと同じであるほか、既定で Wayland を使用するようになっています。また、本バージョンでは初めて GNOME Builder が提供されるようになり、 GNOME の開発者は自分自身の GNOME プロジェクトを開発することができるようになっています。また、 Leap 15 では GNOME のライブイメージも復活しています。
Leap ディストリビューションは健康管理や科学、研究や開発などの分野に対しても、コミュニティ版のパッケージを提供しています。例えば GNU Health では病院内での日々の作業を管理することができるほか、患者の各種情報などを収集することができます。また、 QGIS は地理情報を作成/編集/可視化/分析/公開することのできるアプリケーションです。
openSUSE のリリースに際しては、 Weblate を利用して 50 種類以上もの言語に翻訳を行なっています。 openSUSE の Weblate インターフェイスは、従来のような選任の翻訳者からカジュアルな参加者まで、誰にでも使いやすい仕組みを提供しているもので、 openSUSE の翻訳作業や調整作業だけでなく、 SUSE Enterprise Linux (SLE) の翻訳などもこちらで実施しています。これにより、コミュニティとエンタープライズの共同作業を実現しています。