Features 15.2

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openSUSE 15.2 – Leap

下記のページでは、本 openSUSE リリースで新しくなったものについて、それらを詳しく説明しています。説明が長すぎますか?概要を読みたい場合は、 機能ハイライト をお読みください。

Linux カーネル

Leap 15.2 では Linux カーネルのバージョン 5.3.18 を使用しています。 Leap 15.1 では Linux カーネルのバージョン 4.12 を使用していましたので、そこからの更新となっています。 Leap 15.2 で使用されるカーネルは SUSE Linux Enterprise 15 Service Pack 2 で使用されているものと全く同一のもので、 SUSE 社がメンテナンスしているものでもあります。この Linux 5.3 カーネルでは、 AMD Navi GPU や新しい IPv4 アドレスへの対応が含まれています。また、 RISC-V コードの改善も含まれているほか、 Intel Xeon サーバで使用されている Intel Speed Select との互換性もあります。

ハードウエアサポート

Leap 15.2 は x86_64, ARM (aarch64, armv7), PowerPC (ppc64le) で動作します。配置先としては通常の (物理的な) コンピュータのほか、仮想環境やクラウドにもインストールすることができます。

GNU コンパイラコレクション (gcc)

GCC バージョン 9, 8 (Leap 15.1), 7 (Leap 15.0) がそれぞれ提供されています:

注意事項

   ARM ターゲット (arm*-*-*) では、 GCC 6, 7, 8 の各リリースに存在していたプロシージャコール標準実装 (AAPCS) のバグが修正されています: 64 ビット整数型をベースにしたビットフィールドを含む構造体や、 64 ビット境界にそろえるべき他の要素が存在しない構造体が、関数に正しく渡されていなかった問題を指します。これは ABI の修正に該当します。オプション -Wpsabi が有効化されている (既定値) 場合、コンパイラは影響のありうるコードに対して注意情報を出力します。
   古いシステムや現在メンテナンスされていないシステム、もしくは未テストのターゲットへの GCC 移植へのサポートは、 GCC 9 で廃止予定として定義されるようになっています。それらのシステムを復活させるための活動が行なわれない限り、次期バージョンの GCC ではそれらのシステムに対するサポートが恒久的に削除される予定です。
   具体的には、下記の特定アーキテクチャおよび個別システムに対するサポートが廃止予定となっています:
       Solaris 10 (*-*-solaris2.10) - 詳細はアナウンスをお読みください。
       Cell Broadband Engine SPU (spu*-*-*) - 詳細はアナウンスをお読みください。
   このほか、 GCC 9.1.0 での C++ std::rotate アルゴリズムでは、古いバージョンでコンパイルされたオブジェクトファイルとの間で ABI の互換性が損なわれています。 std::rotate アルゴリズムが空の範囲で呼び出された場合、ゼロ除算エラー (SIGFPE シグナル) を発生させてクラッシュしてしまう場合があります。この変更点は GCC 9.2.0 やそれ以降のバージョンで元に戻されています。詳しくはバグ 90920 をお読みください。また、この問題は std::rotate を空の範囲で呼び出す可能性のあるオブジェクトに対して、再コンパイルを行なうことで回避することができます (std::rotate の GCC 9.1.0 での定義を使用しなくなるためです) 。
   このほか、リンク時点での自動テンプレート展開 (-frepo) が廃止予定としてマークされるようになっています。この機能は将来のバージョンでは削除される予定です。
   また、 9.1 および 9.2 リリースでの --with-default-libstdcxx-abi=gcc4-compatible の configure オプションには問題があることが判明していて、これによって共有ライブラリ内のシンボルが正しく生成されない問題が分かっています (バグ 90361) 。上記の configure オプションを指定せずに通常どおり GCC を構築し、 <bits/c++config.h> ファイル内にある _GLIBCXX_USE_CXX11_ABI マクロを 0 に設定することで回避することができます。

一般的な改善点

GCC 9 には一般的な改善点も含まれています。下記のような内蔵関数が追加されています。

   __builtin_expect_with_probability: オプティマイザに対する分岐予測確率のヒント情報の提供
   __builtin_has_attribute:関数/型/変数が特定の属性で定義されているかどうかの判断
   __builtin_speculation_safe_value: 安全でない投機実行に対する緩和策を支援する機能

言語ごとの改善点は下記のとおりです: C, C++, Fortran 内での OpenACC サポートがメンテナンスされ改善されています。 OpenACC 2.5 のほとんどの仕様が実装されるようになっています。詳しくは OpenACC の wiki ページ内にある実装状態セクションをお読みください。

C ファミリ

   OpenMP 仕様のバージョン 5.0 の一部が C, C++ コンパイラ内でサポートされるようになっています。 OpenMP 5.0 の機能に関する詳細や、 GCC 9 リリースでのサポート内容について、詳しくはメールをお読みください。
   新しい拡張:
       __builtin_convertvector - 内蔵型のベクトル変換機能が追加されています。
   新しい警告:
       -Waddress-of-packed-member - 既定で有効化されるようになっています。構造体や共用体のパックされたメンバーのアドレスからポインタ値を取り出す場合、それが適切に境界配置されていないことを警告します。
   既存の警告に対する拡張:
       -Warray-bounds - 範囲外アクセスをさらに詳しく検出できるようになっています。
       -Wattribute-alias - 別名宣言とそのターゲットの間で、型だけでなく属性の不一致も検出するようになっています。
       -Wformat-overflow および -Wformat-truncation - 書式化する全ての入出力関数に対して警告が拡張され、 %s ディレクティブで文字列を処理する場合に文字列の終端を越える可能性があるかどうかを検出するようになっています。
       -Wmissing-attributes - 別名や弱い参照の定義で、関数の属性が正しく設定されているかどうかを確認するようになっています。
       -Wstringop-truncation - 定数としての文字列において、終端を越える可能性があるかどうかを検出するようになっています。
   パラメータ数の正しくないマクロが使用された場合、 C/C++ のフロントエンドは Note としてマクロの定義を表示します。
   スペル修正機能が転置文字に対応するようになり、類似性の閾値がより厳しく設定されるようになりました。これにより無意味な提案を表示しないようになっています。

C

ISO C 標準の C2X リビジョンで提供される予定の機能に対応するため、 -std=c2x というオプションが実験的に提供されるようになりました。この標準は開発当初の段階であり、 GCC 9 では _Static_assert を 1 つのパラメータのみで使用することができます (C11 および GCC 4.6 では _Static_assert を 2 つのパラメータで使用することができます) 。このほか -std=gnu2x というオプションを指定することで、 GNU 拡張付きの C2X を使用することもできるようになっていますし、 -Wc11-c2x-compat オプションでは C2X で追加された機能を使用すると警告を発するようにすることもできます (-std=c2x や -std=gnu2x を指定していない場合、 -Wpedantic オプションでも警告が表示されます) 。

   新しい警告:
       -Wabsolute-value では、より適切な標準関数が存在する場合に、パラメータの絶対値を計算する標準関数の呼び出しに対して警告を発します。たとえば abs(3.14) のような呼び出しでは fabs で double 値の絶対値を計算できますので、これに対して警告が表示されます。このオプションでは、符号無しの型を持つそれらの関数呼び出しに対しても警告が表示されます。適切な型変換を行なうことで回避できるほか、 -Wextra でも有効化することができます。

C++

   新しい警告:
       -Wdeprecated-copy, implied by -Wextra, warns about the C++11 deprecation of implicitly declared copy constructor and assignment operator if one of them is user-provided. -Wdeprecated-copy-dtor also warns if the destructor is user-provided, as specified in C++11.
       -Winit-list-lifetime, on by default, warns about uses of std::initializer_list that are likely to result in a dangling pointer, such as returning or assigning from a temporary list.
       -Wredundant-move, implied by -Wextra, warns about redundant calls to std::move.
       -Wpessimizing-move, implied by -Wall, warns when a call to std::move prevents copy elision.
       -Wclass-conversion, on by default, warns when a conversion function will never be called due to the type it converts to.
    C++ フロントエンドでは -std=c++2a や -std=gnu++2a のフラグを指定することで、将来公開される予定の C++2a ドラフトの機能を実験的に対応できるようになっています。初期化子を伴う範囲ベースのステートメントやステートレスラムダに対する既定のコンストラクタや代入、未評価のコンテキスト内でのラムダや空のデータメンバへの言語サポート、ラムダ初期化キャプチャ内でのパック拡張の許可や likely/unlikely 属性、非型パラメータ内でのクラス型や定数表記内での仮想関数呼び出し、 explicit(bool), std::is_constant_evaluated, 入れ子になったインラインネームスペースなど、さまざまな機能が追加されています。新機能の詳細については C++ のステータスページをご覧ください。

Fortran

   非同期 I/O に完全対応するようになりました。プログラム側では pthreads ライブラリに対してリンクを行なう必要があります。リンクを行なわない場合、同期 I/O として処理されます。また、 AIX などの POSIX 条件変数に対応しないシステムの場合も、 I/O が同期処理されます。
   MINLOC および MAXLOC に対する BACK パラメータが実装されました。
   FINDLOC 組み込み関数が実装されました。
   IS_CONTIGUOUS 組み込み関数が実装されました。
   c%re や c%im を介した複素変数の実部/虚数部への直接アクセスが実装されました。
   str%len や a%kind による型パラメータ問い合わせが実装されました。
   C ディスクリプタおよび ISO_Fortran_binding.h ソースファイルが実装されました。
   パラメータのいずれかが NaN である場合に、 MAX や MIN の組み込み関数が特定値を返す保証が削除されました。これは Fortran の標準に従うための変更であり、他の Fortran コンパイラでも同様の動作をするものです。何らかの方法でこのような場合に対応したい場合は、 MAX や MIN を呼び出す際に NaN かどうかを明示的にチェック (IEEE_ARITHMETIC 組み込みモジュールで提供されている IEEE_IS_NAN 関数を使用する) してください。
   新しいコマンドラインパラメータ -fdec-include が追加されました。これは -fdec オプションでも設定できますが、レガシーモードでの互換性を高めるための仕組みです。このオプションを指定すると、 INCLUDE ディレクティブをステートメントとしても処理することができますので、複数のソース行にまたがる連続行のディレクティブを作成することができるようになります。
   新しい BUILTIN ディレクティブが追加されました。これは GCC コンパイラと GNU C ライブラリとの間での API を提供するもので、 math ルーチンでベクトル実装の定義を行なうことができるようになります。

ネットワーク

Leap 15.2 では、ラップトップ/デスクトップとも、 NetworkManager を既定で使用するようになっています。

セキュリティ

Leap 15.2 では、同バージョンの SUSE Enterprise Linux カーネルと全く同一のカーネルを使用しています。そのため、必要なバックポートも全て含まれていることになります。

dehydrated / letsencrypt

Dehydrated は ACME サーバ (現時点では Let's Encrypt のみが使用するプロトコル) に対して証明書の発行要求を送信するためのクライアントで、比較的シンプルな bash スクリプトとして実装されているものです。

このクライアントは openssl ユーティリティを利用して鍵や証明書の処理を行なっていますので、あらかじめこのユーティリティをインストールしておく必要があります。

それ以外の要件としては、 cURL, sed, grep, mktemp (cURL 以外はほぼ全てのシステムに存在するはずです) が必要です。

現時点での機能:

  • 複数のドメインに対する署名
  • CSR の署名
  • 期限切れの近い証明書や SAN (サブドメイン) の変更された証明書の更新
  • 証明書の失効要求

systemd

Leap 15.2 では systemd バージョン 234 が提供されています。これは Leap 15.0 や Leap 15.1 と同一のバージョンになります。バージョン 234 では下記のような機能が提供されています:

サービスが有効な間にのみ動的なユーザを作成することができるようになっています。 DynamicUser=yes を指定すると、サービスが有効な間のみ、 61184 から 65519 の間でユーザとグループが動的に割り当てられます。動的に作成されたユーザは nss-systemd.so NSS モジュールで解決することができます。このモジュールは /etc/nsswitch.conf 内で有効化しておく必要があります。この方式で開始されたサービスには PrivateTmp= と RemoveIPC= がそれぞれ有効化され、サービスの終了時にはサービスが割り当てたリソースを削除するようになります。このほか ProtectHome=read-only と ProtectSystem=strict が有効化されますので、システムに対する恒久的な変更ができなくなります。

MemoryLimit= および関連する設定において、パーセント指定ができるようになりました。パーセント指定はシステムに搭載された物理メモリ量 (コンテナの場合は割り当てられたメモリ量) に対する割合で設定します。これにより、システムに搭載されたメモリ量に応じたリソース調整を行なうことができるようになっています。これと同様に、 systemd-logind の RuntimeDirectorySize= オプションでもパーセント指定ができるようになっています。

上記と同様に TasksMax= でもパーセント指定ができるようになっています。この値はシステムの最大プロセス数に対する割合を指定するもので、この機能を利用してサービスごとのタスク最大数が 15% に設定されています (これにより、カーネルの pid_max 値から 512 -> 4915 に拡大されていることになります) 。

ユニットファイルの設定で SystemCallFilter= を指定することで、あらかじめ定義しておいたシステムコールフィルタのセットを指定できるようになっています。たとえば SystemCallFilter=@clock のように指定すると、時計の変更に関するシステムコールをフィルタできるようになります。なお、さまざまなグループがフィルタとして提供されています。システムコールのフィルタ作成は、この仕組みにより大幅に簡略化することができます。同様に、 systemd 独自のサービスについてもフィルタが既定で設定されています。

このほか MemoryDenyWriteExecute= という新しいサービス設定が追加されています。これはブール値 (可否) を設定するもので、有効化すると、書き込み可能でかつ実行可能なメモリマッピングが作成できなくなります。これにより、サービスプロセスの欠陥を突くような攻撃を防ぐことができますので、セキュリティをさらに強化することに繋がります。このオプションは、 systemd 独自の長期稼働型サービスには既定で有効化されています。

Linux 4.5 で追加された統合型 cgroup 階層構造に対応するようになっています。カーネルのコマンドラインに systemd.unified_cgroup_hierarchy=1 を追加することで利用できるようになります。また統合階層構造内での "io" cgroup コントローラにも対応しています。これにより、 "memory", "pids", "io" がコントローラとなっています。

ユニットファイルに対する独自変更を取り消すための "systemctl revert" コマンドが追加されました。この場合、独自変更はユニットファイルのドロップインもしくはオーバーライドとして作成する必要があります。

PHP 7

PHP7 は Web 開発における HTML 組み込み型スクリプト言語でもありますが、汎用のプログラミング言語としても使用することができるものです。 Leap 15.2 ではバージョン 7.4.6 が提供されています。このバージョンではバグ #79497 (1 秒未満のタイムアウトを指定した場合に stream_socket_client() が未知のエラーを発行する問題) が修正されています。

印刷システム

Leap 15.2 では Leap 15.1 と同様に CUPS 2.2.7 を提供しています。 CUPS はモジュール型の印刷システムで、コンピュータ自身を印刷サーバとして動作させることもできる仕組みです。 CUPS の動作するコンピュータはクライアントコンピュータからの印刷ジョブを受け付けることができるほか、それらを処理して適切なプリンタに送信することができます。 CUPS は印刷スプーラとスケジューラのほか、印刷すべきデータをプリンタ側で解釈できる形式に変換するフィルタシステムや、データをプリンタに送信するバックエンドシステムから構成されています。 CUPS はジョブやキューの管理にあたって Internet Printing Protocol (IPP) を基礎として使用しています。 SystemV や Berkeley の印刷システム向けのコマンドラインインターフェイスが提供されているほか、 Berkeley 印刷システムのラインプリンタデーモンプロトコルや Server Message Block (SMB) プロトコルにも限定的ながら対応しています。なお、 CUPS には内蔵の Web ベースインターフェイスがあります。

コンテナ

Leap 15.2 には Singularity をはじめとしたいくつかのコンテナ技術が含まれています。これにより、科学計算や高性能演算 (HPC) の領域にコンテナを持ち込んで、再現性を高めることができるようになれます。 Singularity は Leap 42.3 から提供されるようになったソフトウエアで、最小限のコンテナを構築してコンテナ自身を 1 つのアプリケーション環境として扱うことができる仕組みです。 Leap 15.2 ではこのほか libcontainers-common と呼ばれるソフトウエアも提供しています。こちらは Buildah, CRI-O, Podman, Skopeo など、 github.com/containers ライブラリをベースにしたツール間で共有される、ファイルやマニュアルページの設定を行なうことができる仕組みです。

オフィス/グループウエア

Libreoffice

LibreOffice フリーかつオープンソースのオフィススイートです。 Document Foundation 内のプロジェクトとして活動しています。 LibreOffice はワードプロセッサや表計算、プレゼンテーションなどのアプリケーションから構成される包括的なオフィスパッケージです。

Leap 15.2 に含まれる LibreOffice に関する下記新機能についての詳細は、 リリースノート をお読みください:

Writer

  • Writer 内でのコメントに対する "解決" マークの追加: tdf#119228 (Scott Clarke, Codethink)
  • 順序番号や箇条書きにかけるレイアウト変更履歴の記録問題の解決: tdf#42748 (László Németh, NISZ)
  • Writer テキストフレームに対する右から左/下から上に記述するテキスト機能の追加 (ブログ投稿, Miklos Vajna, Collabora)
  • Writer の画像やグラフに対するコメント機能の追加 (ブログ投稿, Miklos Vajna, Collabora)
  • 新しい wrap オプションによる重複シェイプの自動回避機能 (ブログ投稿, Miklos Vajna, Collabora)
  • OASIS ODF ドラフトに対するアンカー付きオブジェクト重複機能 (コミット 9e827baed18bbcd410029dbcb81ac5a0da2cc6b4)
  • アンカー付きオブジェクトの重複許可 (tdf#124600)

LO 6.4 Writer Wrap menu path for shapes.png

  • シェイプに対する Wrap 関数の編集オプション内に "重なりを許可" チェックボックスを配置。

LO 6.4 writer shapes wrap - allow overlap - checkbox.png

  • シェイプの重複を自動的に無効化するための "重なりを許可" を外す機能の追加。
  • 多数のブックマークが含まれるファイルを取り込んだ際の性能改善 (コミット b5b607cf5afe6ebf5964102770a52965f5b98533 (Michael Stahl, CIB))
  • 段落にアンカーが付けられた描画オブジェクトの選択をより安定させ分かりやすくする改善 (コミット 91b2325808a75174f284c48c8b8afc118fad74e4(Michael Stahl, CIB)

表の処理に対する主な改善点 (László Németh, NISZ):

  • 表の移動や削除の高速化: 表を選択した際の切り取りを、中のテキストではなく表そのものに変更 (tdf#118311)
  • 行や列の移動/削除の高速化 (tdf#127759)
拡張表選択機能 (それらの前部分をクリックして選択) で選択した場合、切り取りコマンドは選択した行や列を切り取るようにした。
その後貼り付けコマンドで貼り付けると、実際の行や列の前にそれらを追加。
  • 表内のデータに対して貼り付けを行なうための新しい貼り付け特殊メニューオプション (ポップアップメニューおよび Writer の編集メニュー)
"Nested table" ("入れ子の表として貼り付け") 特殊メニューオプション (tdf#37156)
  • "Rows above" ("上に行として" (貼り付け)), "Columns Before" ("左に列として" (貼り付け)) 特殊メニューオプション (tdf#64902)
  • 表内のデータを移動するためのドラッグ&ドロップの改善
選択した表を重複させることなく移動させる (tdf#84806)
行や列の移動 (拡張表選択による) と表全体を選択した際は、セルの上書きではなく左または上に行もしくは列を追加するように変更。移動時 (Ctrl を押しながらドラッグ&ドロップするコピーではなく) には、選択した行や列の内容だけを削除するのではなく、 完全に削除するよう変更 (tdf#35570) 。

Calc

  • ハイパーリンクを含むセルの選択の改善 (tdf#126393, Samuel Mehrbrodt, CIB)
  • MM:SS, [MM]:SS, MM:SS.00, [MM]:SS.00 の書式を設定したセルに対して、 "時:分:00" の代わりに 12:34 のような値を入力した場合、それを "時:分" として受け付ける機能の追加 (tdf#76441 (Eike Rathke (Red Hat, Inc.)))
  • 複数の独立した数式グループの処理をスレッド化して処理することによる、コア数の多い CPU での数式グループのスケーラビリティの改善 (core commit 845e1c (Dennis Francis, Collabora))
  • スーパースカラー型サンプルソートアルゴリズム (詳しくはペーパーを参照) の実装による並べ替え処理の高速化。これは何らかの並べ替えが必要なピボットテーブルの作成時に使用されるものです (core commit 46d0af (Dennis Francis, Collabora))
  • 行/列ヘッダのシェードの削除。ヘッダはフラットに描画されるようになっています (tdf#127508 (Heiko Tietze))
  • XLSX ファイルのパスワード長の 15 文字制限の削除 (tdf#97086 (Eike Rathke, Red Hat))

性能改善

  • 多数のコメントが含まれる XLSX ファイルを開く際の高速化 (tdf#129228 (Noel Grandin, Collabora))
  • 多数の COUNTIF() が含まれる Calc 文書を読み込む際の高速化 (tdf#128812 (Noel Grandin, Collabora))
  • 多数のスタイルが含まれる XLS ファイルを保存する際の高速化 (tdf#126021 (Noel Grandin, Collabora))
  • 変更履歴機能のある ODS ファイルの読み込み時の高速化 (tdf#125688 (Noel Grandin, Collabora))
  • Calc 内で多数のコメントが含まれる場合のコピー操作の高速化 (tdf#76324 (Noel Grandin, Collabora))

Impress および Draw

  • Impress に対する 'Remove Hyperlink' ('ハイパーリンクを削除') コンテキストメニューの追加 (tdf#111707 (Samuel Mehrbrodt, CIB))
  • 選択した複数のテキストボックスを 1 つにまとめるための 'テキストの連結' 機能の追加 (主に PDF を取り込んで編集する際に使用します) (tdf#118370 (Justin Luth, SIL))

PDF import Combine Text Boxes.png

  • Draw 内での PDF ファイルの取り込み時のテキスト統合
  • プレゼンテーションモードでのみの動作実行 (オブジェクトのクリック時) 。編集モードの場合は "オブジェクトの動作を実行" コンテキストメニューで実行できます (tdf#125748 (Samuel Mehrbrodt, CIB))
  • イメージマップでハイパーリンクをたどる際には、 Ctrl キーを押しながらクリックするように修正 (Samuel Mehrbrodt, CIB)
  • スライドショー内でもイメージマップ内のハイパーリンクが動作するように修正 (tdf#74045 (Samuel Mehrbrodt, CIB))

性能改善

  • いくつかの PPT ファイルを開く際の高速化 (tdf#121740 (Noel Grandin, Collabora))
  • アニメーション付きのリスト内で入力を行なう際の高速化 (tdf#129708 (Serge Krot, CIB))

ThunderBird

Mozilla Thunderbird はセットアップしやすくカスタマイズしやすいフリーな電子メールアプリケーションです。さまざまな機能が提供されています。 Leap 15.2 では Thunderbird 68.5.0 が提供されています。 Thunderbird 68.5.0 での主な機能は下記のとおりです:

  • POP3 アカウントに対する OAuth 2.0 認証のサポート
  • クライアント識別 IMAP/SMTP サービス拡張のサポート

修正点:

  • アカウント設定時のステータス領域の空白表示の修正
  • カレンダー: 複数回カレンダーコンポーネントを読み込まないように修正
  • カレンダー: Today ペインの幅がセッション間で維持されない問題の修正

ブラウザと Web 検索

Chromium

Chromium はマルチプラットフォーム対応のオープンソース Web ブラウザで、 Google Chrome をベースにして作られているものです。ミニマリストな設計は Chromium をタブ型の Web シェルとして動作させるために必要なものでもあります。 WebKit エンジンをベースにして作られた Chromium は、最新の HTML5 および CSS3 機能をユーザに提供します。

  • マルチプロセス型アーキテクチャ - それぞれのインスタンスやプラグインは個別のプロセスとして動作しますので、エンドユーザにとってはセキュリティの改善や安定性の向上につながります。
  • テーマ - Chromium をデスクトップのデザインとうまく調和させることができます。
  • 拡張 - HTML, CSS, JavaScript の機能を利用して、ブラウザの機能をさらに強化することができます。
  • 設定同期 - 複数のマシン間で設定やブックマーク、拡張やテーマなどを同期させることができます。
  • シークレットモード - プライベートブラウジング機能により、訪問した Web サイトの履歴や Cookie を記録しないようにすることができます。
  • DNS プリフェッチ - IP アドレスへの解決をより高速にします。

Firefox

Firefox はそれぞれの個人をオンラインで管理するための専門組織である Mozilla が作成したものです。 Leap 15.2 では Firefox の拡張サポートリリース (ESR) 版である 68.5.0 を提供しています。このバージョンではセキュリティ脆弱性への対応が行なわれていて、 2020 年 2 月 11 日から ESR チャネルで提供しています。

デスクトップ環境

Xfce

Xfce デスクトップ 4.12 の後継として、 4.14 が新しい安定版となっています。

Xfce-4.14-display-general.png

4.14 では全ての中枢コンポーネントを Gtk3 (従来は Gtk2 でした) および GDBus (D-Bus Glib 経由) に対応させることを主なゴールとしていました。ほとんどのコンポーネントには GObject のイントロスペクションサポートが含まれています。ユーザエクスペリエンスの強化のほか、かなりの数の新しい機能や改善、修正が含まれています。

このリリースでの主なハイライトは下記のとおりです:

  • ウインドウマネージャに対する更新や新機能が多数提供されています。 VSync (Present もしくは OpenGL をバックエンドとして使用) のサポートによるディスプレイのちらつき防止 (もしくは低減) のほか、高 DPI サポートや NVIDIA プロプライエタリ/クローズドソースドライバによる GLX サポートや XInput2 のサポート、さまざまなコンポジタの改善や新しい既定テーマの提供などがあります。
  • パネル側では RandR によるプライマリモニタ機能が提供されているほか、タスクリストプラグインによるウインドウのグループ化 (よりよい UX やビジュアルグループインジケータなど) やパネルごとの "アイコンサイズ" 設定、新しい既定の日時書式や書式解釈器、改善された既定のパネルレイアウトがあります。
  • デスクトップ側にも RandR のプライマリモニタ機能が提供されているため、アイコン配置の際の向きの設定や "次の背景" コンテキストメニューオプションを使用することによる壁紙の拡張、ユーザの壁紙選択の AccountService との同期などがあります。
  • 全く新しい設定ダイアログの提供により、色プロファイルの管理機能も追加されています。ほとんどのユーザにとっては出荷時点から印刷 (cupsd 経由) やスキャン (saned 経由) に対して使用することができます。モニタのプロファイルに対しては、 xiccd など追加のサービスをインストールする必要があります。
  • ディスプレイダイアログには多数の注目すべき機能が追加されています: ユーザ側ではマルチディスプレイの設定を保存 (自動) したり復元したりすることができるようになっていますので、さまざまなドッキングステーションやモニタに接続するようなラップトップ環境では特に便利な機能となっています。これに加えて直感的なユーザインターフェイスにするための改善にも時間が割かれていて、 RandR ディスプレイスケーリング (Xfconf で設定します) への隠しオプションも提供されています。
  • 外観ダイアログでの Gtk ウインドウスケーリングオプションのほか、等幅フォントオプションも追加されています。残念ながら、 Gtk3 への対応が不十分であると判断されたテーマについては削除されています。
  • セッションマネージャからのスプラッシュスクリーンは削除されていますが、その代わりに多数の機能や修正を追加しています。これらの中にはハイブリッドスリープへの対応のほか、競合状態を避けるための既定のセッション設定の改善、自動起動項目の追加と編集機能やログアウトダイアログ内でのユーザ切り替え機能の追加、セッション選択機能や設定ダイアログの改善 (後者には保存されたセッションを表示するための新しいタブが用意されています) 。これらに加えて、ログイン時にコマンドを "自動起動" するだけでなく、コンピュータのサスペンド時やログアウト時にコマンドを実行することができるようになっています。また、 gtk アプリケーションは DBus を介したセッション管理型の構造になり、スクリーンセーバも DBus と通信を行なうようになっています。
  • また従来より提供されているファイルマネージャ Thunar にも対数の機能や修正が追加されています。目に見える改善点としてはパスバーの大規模修正があるほか、巨大サムネイルへのサポートや "folder.jpg" ファイルによるフォルダアイコンの変更 (例: ミュージックアルバムのカバー画像) などがあります。パワーユーザ向けにはキーボードナビゲーションの強化 (拡大/縮小、タブナビゲーション) もあります。 Thunar のボリュームマネージャでは、 Bluray にも対応しています。
  • サムネイル作成サービスである tumbler には多数の修正が加えられているほか、 Fujifilm RAF 形式にも対応するようになっています。
  • アプリケーションファインダでは、単一のウインドウとして開くことのできる機能のほか、キーボードのみで簡単に操作することのできる機能も含まれています。
  • 電源マネージャには多数のバグ修正のほか、いくつかの小さな機能が追加されています。 XF86Battery ボタンへの対応のほか、新しく作成された xfce4-screensaver へのサポートが提供されています。パネルプラグインにもいくつかの改善が含まれています: 残り容量を時間もしくは割合で示す機能のほか、 UPower 標準アイコン名により同梱されるアイコンテーマを使用することができるようになっています。なお、 QT ベースの LXDE パネルプラグインは削除されています。

GNOME

GNOME 3.34 (コードネーム Thessaloniki) が Leap 15.2 には含まれています。 GNOME 3.34 にはアプリケーションオーバービューでのカスタムフォルダ対応が含まれています。一方のアプリケーションアイコンをもう一方のアプリケーションアイコンに重ねるだけでフォルダを作成できます。フォルダはアプリケーションアイコンを外に出すことで削除することができます。これによりアプリケーションアイコンをグループ化できることになります。もちろんグループ内にもさらなるグループを作成することができます。操作は同じで、グループそのものを別のグループ内に重ねてください。これによりアプリケーションの管理をより容易に、わかりやすくすることができます。

Gnome-3.34-icon-grid-drag.png

オーバービューでの視覚スタイルも同様に洗練されているほか、検索入力用のフィールドやログインパスワードフィールド、オーバービューウインドウのハイライト表示にも境界線が描かれるようになっています。これらの GNOME デスクトップへの変更により、より使いやすいしくみへと進化しています。

本 GNOME リリースでの小さな改善点としては、下記のようなものがあります:

  • Photo, Video, To Do などのアイコンの改善
  • Terminal では右から左への言語や双方向表記の言語に対応するようになっています。
  • オーバービュー内でのアニメーション処理が改善され、アイコンの読み込みやキャッシュがより高速化されています。
  • Files では書き込み禁止のディレクトリに対してファイルを貼り付けようとすると、警告メッセージが表示されるようになっています。
  • アクセシビリティ機能では、 Wayland セッションでポインタの位置表示を行なうことができるようになっています。この機能が有効化されると、 Ctrl キーを押すだけで画面内のポインタがハイライト表示されるようになります。
  • Activities のホットコーナー機能を無効化できるようになりました。 org.gnome.desktop.interface.enable-hot-corners を false にしてください。
  • 設定内での Wi-Fi リストがよりやすくなりました。セクション検索も一覧を並び替えることができるようになっています。夜間モード設定は Display パネル内に移動されています。
  • Software では注目のアプリケーションを数多くそろえています。
  • Polari ではアプリをオフラインにした場合、バナーによる通知を表示するようになっています。

KDE および Qt

Qt 5

Qt 5 は長期サポート版 (LTS) であるバージョン 5.12 に更新されています。新しいソリッド型の開発ベースにより、性能の改善のほか、エクスペリエンスの改善や多数のバグ修正が行なわれています。 Qt はツール付きの完全な開発フレームワークであり、デスクトップから組み込み、モバイルプラットフォームまで、さまざまなアプリケーションやユーザインターフェイスを直感的に作成することができる環境です。このバージョンでは Qt for Python にも完全対応し、 Python の開発者からも Qt API が利用できるようになっています。 Qt 5.12 には Qt for WebAssembly の技術プレビューも含まれています。 Qt for WebAssembly は Qt アプリケーションを新しい Web ブラウザ内で動作させるための仕組みで、技術プレビューでありながらもそれなりに動作する仕組みです。

Plasma

Plasma 5.18 LTS は KDE Plasma チームが公開した 3 番目の長期サポート版です。 Leap 15.2 にはこの LTS バージョンが含まれています。 Plasma 5.18 では KDE コントリビュータが 2 年間にわたって更新しメンテナンスし続けてているものです (通常のバージョンは 4 ヶ月のみのメンテナンスです) 。 Plasma 5.18 ではより明確に通知を受け取るための新機能のほか、設定がより直感的になり、外観もよりわかりやすいものになっています。 Plasma 5.18 は易しく興味深いものであるばかりか、仕事をより効率的にこなすことができる仕組みを備えています。

学校や企業、組織内で Plasma への更新や移行を検討している場合は、最も安定していながら、同時に新しい機能も使用することのできる本バージョンが最適であると言えます。

Plasma 5.18 ではさらなる機能の追加により使いやすくなり、仕事から遊び、そして自己表現に至るまでさまざまな作業をよりよく行なうことができます。たとえば新しい絵文字セレクタはキー 2 つを押すだけで呼び出せます。具体的には、メタ (Windows) キーとピリオド (.) を押すだけで絵文字セレクタを呼び出せます。あとは必要な絵文字を選べば、電子メールやソーシャルメディアの投稿、テキストメッセージや端末内にさえも絵文字を貼り付けることができます。

全体的な外観についても改善が行なわれています。 Plasma 5.18 ではクライアント側での装飾を利用して、 GTK アプリケーションに対するサポートを強化しています。これらのアプリケーションには適切な影が設定され、領域のサイズ変更も適切に行なわれるようになっています。また GTK アプリはフォントやアイコン、マウスカーソルなどの Plasma 側の設定を自動的に継承するようにもなっています。このほか起動がかなり高速化されていたり、起動時のスクリプトも bash から C++ に変換され、非同期で動作するようになっています。また、公衆 WiFi へのログインへのサポートも強化されています。

また、目に対する負担を軽減するため、夜間モードを設定するための新しいシステムトレイウイジェットも追加されました。キーボードショートカットでも夜間モードの切り替えや Do Not Disturb モードの切り替えを行なうことができます。

Plasma-5.18-NightColorWidget.png

システム設定

Plasma 5.18 ではシステム設定も大きく機能追加されています。初めて搭載された顕著な機能としては、ユーザフィードバックオプションがあげられます。ただし、既定では個人情報保護の観点から無効化されています。また仮想デスクトップのシステム設定では、 Wayland への対応を図るための書き換えが行なわれているほか、 Thunderbolt デバイスを管理したり設定したりするための新しいパネルも追加されています。

とはいえ、インストール環境に関する情報を我々と共有していただいた場合でも、システムに対して個人情報の送信を許可するようなことはありません。事実、フィードバック設定のスライダーでは、 KDE の開発者との間で共有したい情報を選択することができます。お送りいただいた情報は KDE の開発者に送信され、今後の Plasma の開発に利用させていただきます。

Plasma-5.18-UserFeedback.png

本リリースにおけるその他の変更点は下記のとおりです:

  • Discover が大幅に改善されています。コンピュータのファームウエアをアップグレードするための fwupd に対応しています。
  • 外付けモニタのダイアログと設定項目が改善されています。
  • メディアプレーヤのウイジェットが改善されています。
  • さまざまな箇所において Wayland のサポートが改善されています。
  • Wayland では分数スケーリングに対応しています。
  • XdgStable, XdgPopups, XdgDecoration の各プロトコルを完全に実装するようになっています。
  • Wayland では仮想デスクトップにも対応するようになり、 X11 よりもより細かく調整できるようになっています。ユーザはウインドウを 1 つの仮想デスクトップや全ての仮想デスクトップだけでなく、任意の複数の仮想デスクトップに配置することができます。
  • プロプライエタリ nVidia ドライバを利用した Wayland の使用にも対応するようになりました。 nVidia グラフィックを利用した場合に、スリープからの復帰時にグラフィックがおかしくなる現象もありません。
  • 新しいアクセシビリティ機能により、 libinput 経由でキーボードによるカーソル移動を行なうことができるようになっています。
  • Plasma のシステムモニタである ksysguard に多数の改善が行なわれています。
  • Flatpak ポータルに対応するようになっています。

フレームワーク

KDE フレームワークは 70 種類以上のライブラリから構成されています。 Frameworks 5.68.0 がゴールドマスターとして提供される予定です。新しい KDE フレームワークでは、 Baloo, Breeze Icons, KAuth, KActivities, KConfig, KIO, Kirigami, KWidgetsAddons, KWayland, Oxygen Icons など、さまざまなパッケージに対する変更が行なわれています。

アプリケーション

KDE アプリケーションはバージョン 20.04.2 にアップグレードされ、多数の新機能と使いやすさの改善が行なわれています。このバージョンではミュージックプレーヤ Elisa への改善が含まれているほか、ファイルマネージャ Dolphin に対する検索タグ機能や KDE の高度なビデオ編集アプリケーションである Kdenlive の高速化も含まれています。

openSUSE の技術

Snapper

Snapper は btrfs や LVM のスナップショットを管理するためのツールです。スナップショットの作成や差分表示/復元のほか、時間経過による自動スナップショットにも対応しています。新しく 機械処理可能な出力 にも対応しましたので、スクリプト内でのスナップショット処理もできるようになっています。このほか、 libzypp 向けの Snapper プラグインが書き換えられ、 Python に依存しないようになっています。これにより、必要なパッケージを大きく減らすことができるようになっています。

YaST

インストーラの改善

openSUSE のインストーラは以前よりパワフルで幅広い用途に対応可能なものですが、さらに個別の要素に対する磨き上げが行なわれています。たとえば Spectre や Meltdown として知られる CPU の脆弱性に対する緩和策設定 ができるようになっていたりします。とはいえ、使いやすさを無視しているわけではありません。 Leap 15.2 ではインストール処理への改善、たとえばシステムの役割選択の改善やインストール進捗状況の表示、そしてアラビア語などの「右から左」に記述する言語への対応など、さまざまな拡張が行なわれています。

Leap では対応可能な全てのハードウエアにおいて、全く同じ使いやすさを提供します。たとえば Raspberry Pi のようなシングルボードコンピュータにおいても、メインフレームのような巨大なシステムにおいても、同じ使い心地になるようになっています。もちろんそれぞれのプラットフォーム固有の仕組みへの対応もあります。そのため、 Leap 15.2 のインストーラは Raspberry Pi の小さなストレージへの対応から、 BitLocker で暗号化された Microsoft Windows のパーティションの検出、そして IBM ZSeries メインフレームのストレージの新機能や Secure Boot 、そして I/O デバイスの自動設定まで、さまざまな機能に対応しています。

YaST の改善

YaST は Linux 向けの最も完全な設定ツールです。 Leap 15.2 ではシステムの設定を /usr/etc と /etc の各ディレクトリに分割し始めた最初の openSUSE リリースで、対応する YaST モジュールに対しても、その新しい構造に対応するようになっています。これにより、このような裏側での変更を気にすることなく、システム管理者向けの便利なツールとなっています。

Leap は Windows Subsystem for Linux (WSL) 内でも動作させることができます。これにより、 Windows の世界にも openSUSE が進出することになります。 Leap 15.2 の YaST では WSL での互換性改善が提供され、初回起動時に YaST Firstboot が動作して、必要な調整を行なうことができるようになっています。

この新バージョンの YaST には、もう 1 つのゴールがあります。それはネットワークの設定に関する使いやすさの改善です。 YaST ネットワークモジュールは広範囲に書き換えられ、より強健で一貫した仕組みでありながら、見た目だけでなく裏側でも機能拡張が行なわれています。

YaST のパーティション設定モジュールは従来通り、 Linux のストレージデバイスの全種類に対応した最もパワフルなツールであり続けています。インストール時のほか、インストール後にも使用することができます。このリリースでは、いくつかの使いやすさの改善のほかに、 複数のデバイスにまたがる btrfs ファイルシステム の作成や管理ができるようになっていますし、 高度な暗号化技術 にも対応するようになっています。

改善が行なわれた YaST モジュールは上記だけではありません。 ソフトウエアマネージャはより高速化 されているほか、 NFS モジュールはより強健に、機能性が高められています。 YaST の NTP クライアントでは、 systemd タイマーを利用して定期的な時刻同期を行なうようになっています。このほかにもキーボードやブートローダ、 Kdump やセキュリティなど、さまざまな細かい修正が適用されています。

AutoYaST

AutoYaST は openSUSE Leap システムを一括大量インストールするための仕組みで、インストールや設定に必要なデータを AutoYaST プロファイルとして指定するものです。 AutoYaST を使用することで、複数のシステムを同時並行に素早くインストールすることができます。プロファイルは XML 形式 (通常は autoinst.xml というファイル名) で、 "AutoYaST コントロールファイル" とも呼ばれます。既存の設定リソースを利用して雛形を作成し、必要な調整を後から行なう形になります。

AutoYaST はシステムに完全統合され、インストールから設定に至るまで、さまざまなオプションを提供しています。他の自動インストールシステムとは異なり、既存のモジュールを利用して設定を作成することができるほか、インストール完了後に独自のスクリプトを動作させるようなこともできます。

このリリースではさまざまな要素に磨き上げがされています。さまざまな設定オプションの追加やプロファイル内のエラー検出機能の強化、そしてインストール処理もより厳格に分かりやすく動作するようになっています。

アプリケーション

マルチメディア

VLC

VLC 3.0.7 は "Vetinari" の 7 回目のアップデートです:

  • Windows における HDR サポートの改善 (HLG ストリームを含む)
  • Blu-ray サポートの改善 (特にメニュー)

さまざまなセキュリティ修正:

  • 危険性の高いセキュリティ修正が 1 件、危険性が中程度および低いセキュリティ修正がそれぞれ 21 件と 20 件修正されています。整数オーバーフローからバッファオーバーフロー、範囲読み込み違反とスタックオーバーフローがあります:
* MKV デミュクサ内でのバッファオーバーフローの修正 (CVE-2019-14970)
* avcodec デコーダ内での読み込みバッファオーバーフローの修正 (CVE-2019-13962)
* FAAD デコーダ内での読み込みバッファオーバーフローの修正
* OGG デミュクサ内での読み込みバッファオーバーフローの修正 (CVE-2019-14437, CVE-2019-14438)
* ASF デミュクサ内での読み込みバッファオーバーフローの修正 (CVE-2019-14776)
* MKV デミュクサ内での解放後使用の修正 (CVE-2019-14777, CVE-2019-14778)
* ASF デミュクサ内での解放後使用の修正 (CVE-2019-14533)
* MP4 デミュクサ内での複数の整数アンダーフローの修正 (CVE-2019-13602)
* dvdnav デミュクサ内での NULL 被参照の修正
* ASF デミュクサ内での NULL 被参照の修正 (CVE-2019-14534)
* AVI デミュクサ内での NULL 被参照の修正
* CAF デミュクサ内でのゼロ除算の修正 (CVE-2019-14498)
* ASF デミュクサ内でのゼロ除算の修正 (CVE-2019-14535)

GNU Health

受賞歴のある医院内管理システムである GNU Health はバージョン 3.6.4 が提供されています。 GUI の更新のほか、 COVID-19 パンデミック追跡の支援が追加されています。このほか ICD-10 コードの更新や実験室機能の改善も含まれています。

これに加えて、フリーの PACS サーバ (こちらも openSUSE 内に含まれています) である Orthanc と直接対話する機能も備えています。

OnionShare

Leap 15.2 では OnionShare 2.2 が公式パッケージとして提供されています。OnionShare は機密を保ったまま匿名でファイルを共有する仕組みで、 Web サーバを起動して Tor Onion Service としてアクセスできるようにし、推測のできない URL を生成してファイルへのアクセスやダウンロードを提供します。別途サーバを構築する必要が無いほか、他社製のファイル共有サービスも不要です。ファイルはプログラムの動作するマシンから直接提供されます。受信者側では Tor ブラウザ内で URL を入力するだけで、ファイルをダウンロードすることができます。

Syncthing

Syncthing は複数のデバイス間でファイルを同期するためのアプリケーションです。一方のマシンでファイルを作成/修正/削除すると、その変更は他のマシンにも反映されることになります。 Leap 15.2 では、バージョン 1.3.4 が提供されています。

Sway

openSUSE Leap 15.2 にはタイル型の Wayland コンポジタ Sway のバージョン 1.4 が含まれています。これは X11 向けの i3 ウインドウマネージャをその場で置き換え可能な仕組みで、 Sway ではアプリケーションをデスクトップ空間内で配置するのではなく、論理的に配置することができます。ウインドウは画面内の効率を最大限に発揮するために既定でグリッド型の配置が行なわれ、キーボードでも簡単に操作できるようになっています。

その他の新機能

Orthanc

Orthanc はヘルスケア/医療研究向けの RESTful な DICOM サーバです。

Orthanc はシンプルながらもパワフルな DICOM サーバとなるよう作られています。 Orthanc は任意のコンピュータを DICOM ストア (言い換えるとミニ PACS システム) とすることができます。アーキテクチャは軽量な仕組みで、複雑なデータベース管理が不要であるほか、他社製の製品にも依存していません。

Orthanc の独自性としては、 RESTful な API を提供している点があります。このような目立った機能のおかげで、任意のコンピュータ言語から Orthanc を制御することができます。保存された医療情報内の DICOM タグは、 JSON ファイル形式でダウンロードすることができます。これに加えて、 Orthanc の DICOM インスタンスから、その場で標準 PNG 画像を生成することもできます。

openSUSE 向けには Orthanc のさまざまなプラグインもあります。また Orthanc は GNUHealth とも統合されています。

人工知能 (AI) および機械学習

Tensorflow

データサイエンティストが使用するような深層学習向けのフレームワークで、数値計算やデータフローグラフなどの機能が提供されています。この柔軟なアーキテクチャにより、コードを書き換えることなくデスクトップからサーバ、モバイルデバイスに至るまで、さまざまな環境で使用することができるようになっています。

PyTorch

サーバとしても計算リソースとしても使用できることから、この機械学習ライブラリはユーザに対して、プロジェクトのプロトタイプ作成から本番環境への移動まで、さまざまな機能を提供します。

ONNX

機械学習モデルを表わすオープンな書式は、 AI ツールの領域に相互運用性の力をもたらします。 AI 開発者向けにはさまざまなフレームワークやツール、ランタイムやコンパイラなどを使用できるようにします。

Grafana

Grafana には分析の専門家向けの新しい可能性が含まれています。Grafana ではエンドユーザに対して対話的な分析を作成する機能を提供します。データモデリングパッケージも豊富にそろえています: Graphite, Elastic, Prometheus では、データをより知的に構築し、計算して解き明かす仕組みを提供しています。

Prometheus

Prometheus は優れたオープンソースのモニタリングソリューションで、ユーザや研究者に対してリアルタイムなイベントの監視や警告などの機能を提供します。メモリやディスクの効率も高く、パワフルで素晴らしいデータの可視化を行なうことができます。

Pagure Git ホスティングフォージサーバ

Leap 15.1 で提供されるようになった Pagure Git ホスティングフォージサーバは、 Leap 15.2 で更新が行なわれています。 Leap 15.1 と同様に、 openSUSE デザインが既定で適用されています。

Pagure は独自の完全機能 git リポジトリサーバを構築できる仕組みで、易しくカスタマイズしやすく、軽量なソリューションです。他の著名な git ベースサービスに似た構造で、開発者と貢献者が相互にコードやコンテンツを共有できる仕組みです。しかしながら、他の git ベースサービスには存在しない、分散型のソフトウエアコードホスティングと開発の仕組みが備わっています。

Leap 15.2 では、 Pagure がバージョン 5.10.0 に更新されています。新バージョンでのハイライトは下記のとおりです:

  • "pagure-admin" CLI ツールによる管理機能の増強
  • プロジェクトを跨ぐ (インスタンス全体の) API トークンのサポート
  • CI/CD ワークフローとインフラストラクチャへのサポートを目的とした、プロジェクトデータにアクセスしたりデータを操作したりするための新しい API ポイントの提供
  • ファイルに対するコミット履歴を表示するためのビューモード
  • プロジェクトの統計情報を表示するためのグラフの改善
  • HTTP ベーシック認証を利用した HTTP(s) プッシュのサポート ("commit" スコープの API トークンによる。インスタンス管理者側での有効化が必要) 。

バージョン 5.5 から 5.10.0 へのアップグレード方法について、詳しくは "/usr/share/doc/packages/pagure/UPGRADING.rst" をお読みください。

DNF パッケージマネージャ

DNF は次世代の依存関係解決器で、 YUM (Yellowdog Updater, Modified) と libsolv という 2 つのプロジェクトの子孫として提供されている高レベルなパッケージ管理ツールです。 DNF は数年前に YUM から分岐して作られたもので、 libsolv を利用するよう書き換えを行なっているほか、大幅なコードベースの再構築で分かりやすい API となり、 DNF の拡張 (プラグインやフックを利用するもの) やこれをベースにしたアプリケーションの構築 (グラフィカルなフロントエンドシステムやシステムのライフサイクル自動化フレームワークなど) も容易にしています。

DNF は YUM と比較すると下記のような点が異なります: メンテナンスされ文書化された Python API, 拡張された問題点報告, 弱い依存関係の高度な追跡, 巨大な依存関係への対応, 何らかの処理を実行する際のより詳細なトランザクション情報提供など。

DNF Python API は安定してサポートされていますが、その中で動作する libdnf や hawkey API (C/C++ および Python) は仕様が安定しておらず、将来のリリースでは変更される可能性があります。

Leap 15.2 では DNF のバージョンが 4.2.19 となり、さまざまな修正や改善が行なわれています。

いくつかのハイライト:

  • 端末側で対応していれば既定で色づけを行なうように変更
  • リポジトリ ID 内での変数への対応
  • 複数のディレクトリから変数やリポジトリ設定を読み込むように変更

これらに加えて、 "Micro DNF" と呼ばれる軽量型の C 言語実装も含まれています。これは DNF の詳しい知識が無くてもシンプルなパッケージ管理機能を使用することができるように作られていて、できる限り簡易な構造を提供します。これは特にコンテナやアプライアンスで便利な仕組みです。

最後に DNF を使用する代替 PackageKit バックエンド (実験的なもの) も利用することができます。

なお、 DNF は現時点では openSUSE のリポジトリに対するソフトウエア管理を行なうようには構成されていません。

Tilix

Tilix はタイル型の端末エミュレータで、 VTE GTK+ 3 ウイジェットを使用するものです。下記のような機能が含まれています:

   水平方向もしくは垂直方向に分離できる端末レイアウト機能
   端末はドラッグ&ドロップで並べ替えができるほか、ウインドウ内でもウインドウ間でも並べ替えができます
   端末はドラッグ&ドロップで切り離すこともできます
   タブやサイドバーで現在のセッションを表示します
   入力は複数の端末に一括入力することができますので、複数の端末を同時に操作することができます
   端末グループをディスクに保存したり、ディスクから読み込んだりすることができます
   端末には独自のタイトルを設定できます
   色スキームはファイルに保存されるため、新しいファイルを作成するだけで独自の色スキームを定義することができます
   透過型の背景に対応しています
   背景画像の設定にも対応して今
   Quake モード (ドロップダウン型の端末) にも対応しています
   独自のハイパーリンク機能
   ホスト名やディレクトリをベースにした自動プロファイル切り替え
   表示されていない端末の処理が完了した際の通知にも対応。 VTE 向けの Fedora 通知パッチが必要
   実験的なトリガーサポート (VTE パッチを適用する必要があります。詳しくは wiki を)
   実験的なバッジサポート (VTE パッチを適用する必要があります。詳しくは wiki を)

オペレーティングシステムの基礎部分